私はロボットアニメが好きだ。
その中でも「機動戦艦ナデシコ」がダイターン3やファフナーと並んで好きだ。ナデシコは従来のロボットアニメに徹底的に逆張りしつつもハードで熱い展開の多い名作である。*1
ゆえにスパロボ参戦が難しいとされていた時期もあったが「A」で参戦して以降は携帯機を中心にしばしば参戦するようになった。
今回はエヴァ、マジンガーに続きスパロボにおいてのナデシコについて語ろうと思う。
TVシリーズが参戦しているスパロボを中心に語るので劇場版のみ参戦の作品は割愛。
では
スーパーロボット大戦A(A Portable)
記念すべき初参戦作品で、原作再現も多く扱いが非常に大きい。
特に「『僕達の戦争』が始まる」の思想が根幹に組み込まれており、たとえ巻き込まれたとしても一度武器を取ればもう当事者であり決して後戻りはできない事が様々なキャラクターの目線から色濃く描写される。
「ナデシコ」主人公のアキトや「グレンダイザー」のデューク、「ガンダム08小隊」のアイナ。
中でも戦争兵器として作られた人造人間であるオリジナル女主人公ラミア・ラヴレスを選んだ場合はシャドウミラー幹部のレモンに「これからどうするのか」を聞かれ、「自らの意思」によってシャドウミラーを裏切りロンド・ベルへ戻る熱い展開がある。
その時の言葉がこれである。
セリフだけ聞くと08小隊のアイナと同じだが、ナデシコが物語の根幹にある以上恐らくは「僕たちの戦争」文脈だろう。
クロスオーバーどころか物語の根幹に組み込まれていて本当に恵まれた初参戦だと思う。
ナデシコが好きならば間違いなく楽しめる。
メガノイドが火星極冠遺跡周辺を本拠地にしているためドン・ザウサーとの最終決戦もそこで行われる*2。
問題点があるとすればアカツキとエリナが最後まで改心しない事と、やたら敵が固いこと。
あと陸戦フレームが操作できない…くらいか。
ヤマダさんはフラグを立てれば生存する。
スーパーロボット大戦IMPACT
私の初スパロボである(隙自語)
概ね原作通りなので特に言うことがないが、強いて言うなら九十九生存フラグを立てていた場合は破嵐万丈がメガノイドの技術を使って手術を施すクロスオーバーがある。ここの万丈が人の命の重みとメガノイドへの憎しみを天秤にかけ苦しみ折り合いをつけるシーンは本当にかっこよかった*3。
あとヤマダさんのエステバリスにはユリカを乗せることが出来る。とても可愛い。
スーパーロボット大戦R
新規参戦以外のほとんどが「A」からの流用の手抜きゲームなため当然参戦している。序盤数話が劇場版だがタイムスリップしTV版を再現するのでTV版アキトがブラックサレナに乗る、という非常に珍しい光景が見られる。
だがキャラの言動の改悪が目立ち、プロスペクターは非常に嫌味ったらしくなっており木連は野蛮で頭の固い一族として描写されている。
ナデシコの扱いの善し悪しというよりもスパロボRそのものが問題点の塊のような駄作なので特に何かを言うつもりはない。
ヤマダと九十九は確定生存。うーん…
アカツキは出てこない。何故?
スーパーロボット大戦J
何度が参戦して扱い方が掴めてきたのか、キャラも違和感がなく原作再現も非常に多い。
火星極冠遺跡=グラドスの刻印(レイズナー)というクロスオーバーは非常に秀逸。
レイズナー本編での刻印の発動はイデをクッソ雑でご都合主義丸出しに変えたようなお粗末なものだが、スパロボマジックでこの通り。
草壁がクルーゼに殺されるので劇場版には繋がらない。やったぜ。あとルリが覚醒を使えるのでナデシコがマジで強い。
スーパーロボット大戦W
「ナデシコ」をどんな作品だと思っているかによって本作のナデシコの扱いの賛否が分かれるだろう。
個人的には否である。圧倒的に否。
なぜならナデシコの「表向きのコミカルな部分」ばかりピックアップしているからである。
相変わらずヤマダさんは生存しただの熱血パイロットになるし、なぜなにナデシコに興味津々なトロワだったり、九十九の「マジン、ゴー!」だったり挙げ続けるとキリがない。
ナデシコはそんなしょうもないギャグアニメではないんだが?頭ウィンキーソフトか?
二部構成で後半に劇場版が控えているゆえにこうなった、というのはわからなくもない。
しかし本作はナデシコに限らずガンダムSEEDやフルメタなどのTV本編が第二部で再現する劇場版や外伝のしわ寄せを食らってしまう作品が多くあった。*4
まあ、これはクロスオーバーと原作再現をかなり高いレベルで両立できたテッカマンブレードが奇跡だったのだろう。*5
最高のエンディングのために特定の作品を持ち上げ特定の作品を下げるやり方は「一本の作品」としては名作でもキャラゲーとしては少し疑問の残るスパロボである。
スーパーロボット大戦MX
劇場版のみの参戦のため、割愛。
スーパーロボット大戦BX
真打登場。
スーパーロボット大戦は数あれど、ナデシコの扱いにおいてBXに並ぶものはない。
本作はナデシコの持ち味である「コミカルさで包み隠したハードな作風」を存分に活かしている。
それゆえヤマダさんはストーリー開始時から既に死亡しているという原作通りの展開。
「劇場版マクロスF」「機動戦士ガンダムAGE」との絡みが非常に多い。
特にクイーンフロンティアが演算ユニットを持ったままフォールド*6してしまうため劇場版には繋がらない(歓喜)。
キャラクター単位では、アキトが月にボソンジャンプしてしまった時にジラード・スプリガンに保護監督され、得意の料理を振る舞うなどして良い仲になる。シンジとミサトくらい年の離れたお姉さんとイチャイチャする様子にはユリカも嫉妬を隠せなかった*7。
ジラード生存フラグを立てた場合はアキトの説得により自軍加入、という「このジラードって人はナデシコのキャラなのか?」と勘違いする人も出るほど綺麗なクロスオーバーをしている。
音楽面でも「YOU GET TO BURNING」のTV版イントロ仕様が収録されていて、イベント時に大いに活用された。
アカツキがちゃんと改心する上に、今まで合体攻撃がないせいか火力に恵まれなかった彼についにダブルゲキガンフレアが追加される*8。
そして川崎ヒロユキが過去にシリーズ構成していたとある作品を「どう言った気持ちで制作していたか」を暴露した事*9で物議を醸した傑作回「それは『遅すぎた再会』」が初めて再現される。
しかし、本編では第17話だったのにBXではナデシコ関連のシナリオが全て終わった終盤に再現される。
ムネタケ提督は出世欲こそ強いが、それでも正義を信じて戦ってきた。
それは原作よりも強く描写されており、木星蜥蜴の正体が人間とわかった時も原作では動揺していたがBXでは
「相手が同じ人間だろうと、こっちは侵略されている立場なのよ。守るために戦うのが当然でしょう?」
と非常に正義感の強い発言をしている。
それゆえに彼は本作で許された。
原作のようなガイの幻覚ではない。ザ・パワーに取り込まれた精神体として本物のダイゴウジ・ガイが登場し
‘‘正義の味方は、過去には拘らねえよ。さあ、勇気を出して俺と一緒に正義を貫こうぜ!’’
とムネタケを許し、共に戦うために手を差し伸べる。Xエステバリスが名曲「サヨナラノツバサ」をバックに放つのはグラビティブラストではない。
ゲキガン・フレア
正義の味方の熱血の一撃は、五次元帝国のジャークサタンを倒し、罠を打ち破る。
原作ではドッグ艦「コスモス」を敵と認識し攻撃しようとしガイの幻覚を見ながらXエステバリスのオーバーロードで自爆して死んでしまうが、BXでは正義の味方として邪悪を打ち砕く!!!
ナデシコが好きな私は感涙のシーンだった。ありがとう。こんなに嬉しいことはない。
救済されたのはムネタケだけではない。この展開によりヤマダ・ジロウはダイゴウジ・ガイになる事が出来たのだ。
まちがいなくスパロボ史上一番熱血で一番かっこいいガイだったと思う。
スーパーロボット大戦V
劇場版のみの参戦のため、割愛。
スーパーロボット大戦T
劇場版のみの参戦のため、割愛。
最後に
私が今回この記事を書こうと思ったのは他でもなく「BX」のヤマダとムネタケの話がしたかったからである。
私は「機動戦艦ナデシコ」という作品が大好きで、それゆえにスパロボにおいてのヤマダの扱いに納得ができなかった。
ヤマダは第3話という早くに死んでしまうが、その理由は何故か?それは至って簡単「戦争を舐め腐ったキモオタ野郎だから」である。
ヤマダはパイロットとしての技量は高かったが戦争をヒーローごっこだと勘違いしているから死んだのである。
「ナデシコ」はオタク文化そのもが作品の根幹のひとつでもあり、前述の第17話「それは『遅すぎた再会』」でもウリバタケが
「だが、あくまでも模型だ。本物の戦争じゃない。こちとら、人殺しの機械を愛してウン十年だ。リアルさと現実の折り合いは付けてるつもりだぜ」
*10という名言を残している。
だから戦争という状況でありながら現実とアニメを混同するヤマダの行動は大罪であり、死ななければならない。
だがスパロボユーザーはナデシコの本質を理解していないバカばっか*11*12なので安易なヤマダの生存に喜んでいる。
WやJのヤマダを思い出して欲しい。確かに熱くてかっこいいがもはや別人だろ。戦いを舐め腐ったオタク野郎があいつの本質なんだよ。
俺は別にヤマダは嫌いじゃない。むしろ好きなくらいだ。でもそれはさっき言ったキャラ造形な上に序盤でムネタケに殺されて退場する因果応報な末路の秀逸さと、その後のまるで生き写しのような九十九との関係性だ。
そもそもヤマダが生きてたら九十九というキャラが曲がってきてしまう。
そんな中でもヤマダを最初から死なせておく事で罰を与えつつXエステバリスシナリオで「正義の味方ダイゴウジ・ガイ」へと変えたBXはナデシコ関連ゲームとしてはもちろん、スパロボ史においても爪痕を残し名作になれたのだ。
スパロボ最高傑作を聞かれた時私は真っ先に「UX」*13を挙げるが、その次に挙げるのは「BX」だと思う。これほど原作愛とドンピシャな解釈とクロスオーバーが緻密なスパロボはないからである。
*1:中でも第16話 「『僕達の戦争』が始まる」はシリーズ構成の會川昇さんが後にてがける「コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜」に通ずる部分のある傑作エピソード。
*3:本作の万丈はメガノイドへの憎しみやエゴイストな部分が歴代スパロボでもトップクラスに再現されている。傑作回「コロスは殺せない」はなんとDVE付きで再現される!
*4:なんとキラのストライクはスポット参戦なので自軍で操作できない。更に加えるとキラは明確にロウの噛ませで陰キャにされる改悪、ラスボス戦になっても吃っていて本当に耐えられなかった。
*5:「時の止まった家」の再現は本当にありがとうございました
*6:要は空間転移
*7:ここのユリカがマジで可愛い
*8:ただし、技名は叫ばない。おたくではないので
*9:確かにプロット段階ではガンダムXの自虐だったのかもしれないが、絵コンテや佐藤監督、シリーズ構成の會川昇が頑張ったからちゃんとムネタケを救済する「ナデシコの17話」という「作品」になれたんだと私は思っている。
*10:エヴァの「オタクは現実に帰れ」に対するカウンターとも受け取れる
*11:顔真っ赤にしてこんな記事を書いちゃうアタシも結構バカよねえ。