ガンダムシリーズにおいての「悪」とは何か。

ガンダムは従来のロボットアニメとは違い勧善懲悪ではない。恐竜帝国やメガノイドのようないわゆる「悪の軍団」は出てこない。

しかしそんな世界でも許されざる悪は存在する。

今回はそんな悪を宇宙世紀を中心に私の主観で紹介していく。

 

 

自分の行動に責任を持たない者f:id:serimetagross:20231026164819j:image

該当者:パプテマス・シロッコクンパ・ルシータなど

カミーユ曰く「お前だ!いつもいつも、脇から見ているだけで、人を弄んで!」な人物。歴史の生き証人や傍観者を気取り安全圏から戦争に干渉する卑怯な奴らだ。特にクンパは人類を「絶滅した方がいい動物」と蔑むほどの過激な人物でありながらあくまでも直接誰かを殺したりはせず遠回りな方法で自分の手が汚れないように立ち回る小悪党。主人公の手で引導を渡すのが難しいタイプの敵であるため戦闘に巻き込まれる形で死なせたのは英断だと思う。

 

 

民間人を大量虐殺する者f:id:serimetagross:20231026164748j:image

該当者:ギレン・ザビシャア・アズナブル(CCA)、フェザール・イゼルカントなど

いくら目的が崇高だろうと虐殺行為は悪である。地球連邦に宇宙移民を完遂させるためアクシズを落とそうとするシャアにアムロは「人が人に罰を与えるなどと!」と言っていた。ギレンは地球保全+優生思想のおまけつきである。*1

そして優生思想の中でもイゼルカントは一番ヤバい。「戦争のない楽園」を実現するために火星と地球の全面戦争で生き残った「優良種」だけを地球に住まわせるとんでもない世直しを行おうとしていた。勧善懲悪アニメの悪者ですらドン引きする本物の魔王だ。

 

地球連邦政府

宇宙世紀ガンダムシリーズ最大の悪。地球連邦政府は宇宙移民という名目でスペースコロニーに棄民し、しかもコロニーに住むスペースノイドを何十年も搾取し続けている。シャアやジャミトフ、ハマーンらのやり方や組織は皆違ったが「地球連邦政府に宇宙移民を完遂させる」という目的自体は同じであった。ガンダムが勧善懲悪ではない一番の理由は「主人公が体制側の組織に所属している」事である。

しかし同時に歴代のガンダムパイロット達はあくまでも連邦「政府」ではなく連邦「軍」に所属しているため決して体制の犬にはならない強い反骨精神を持つ。ガンダムが勧善懲悪ではないはずなのにロボットアニメとしてのヒロイズムを失わない理由はこれである。

 

 

平和ボケしている者

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該当者:ギム・ギンガナム、ジット団、東方不敗など

この場合の平和ボケとは何かと言うと「戦争を賛美すること」である。そういう人間は「∀」と「Gのレコンギスタ」において徹底的に悪として描かれた。中でもジット団はレコンギスタという大義があるのをいい事に「正義の戦争」を気取りモビルスーツや戦艦をおもちゃのように扱う。最終回でラライヤがジット団と合流したアメリアの艦隊に向けた言葉がある。

あの軍艦に乗っている大人って、大きなおもちゃを貰ってはしゃいでるんです!
あそこにいる大人たちが!貴方達は、そういうものを使う意味がわかっていません!

かなり本質を突いている。

東方不敗の平和ボケもなかなかだ。確かにガンダムファイトを否定する彼の独白は戦争の悲哀を知っているから説得力があったが、根本的に彼は大きな勘違いをしている。

東方不敗「なにがガンダムファイトだ!? なにが理想的な戦争よ!?我が身を痛めぬ勝利が何をもたらす?所詮はただのゲームぞ!

ドモン「だが、無闇に人が死ぬよりは遥かに良い!」
東方腐敗「だからお前はアホなのだぁぁぁ!

確かにガンダムファイトはお遊びかもしれないが人の命が守れるならそれに越したことはない。しかしドモンの言葉を「アホ」と切り捨ててしまう東方不敗は戦争を賛美する平和ボケした老害になりさがってしまったのだ。

 

 

まとめ

ガンダムは勧善懲悪ではないが英雄譚ではある。なので善悪の境目こそ曖昧なものの義理人情や守るべき社会的道徳(=正義)は確実に存在し、同じように憎むべき悪は存在するのだ。

 

 

 

*1:まあギレンに関してはコロニーを落とす際にサイド2の人間も虐殺しているので地球だけでなくコロニー含めた人類全体の敵だと思うが…

キラ・ヤマトという男

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「不殺を貫く」と言われたり「不殺ではない」と言われたり公式の媒体の中ですら解釈が割れるキラ・ヤマトという男。

劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」の公開が三ヶ月後に迫る今こそ、この辺の線引きはハッキリさせておきたい。

もちろん私個人の意見なので公式設定でもなんでもないし読んでくれている皆様は決して鵜呑みにしないで欲しい。

まず前提として、ほとんどのガンダム主人公は「なるべく殺したくない」「でも戦争だから仕方なく殺してる」というスタンスを取っている。*1

アムロは「相手がザクなら人間じゃない」と自己暗示をかけ*2カミーユは「俺に出来る事と言ったら人殺しだけみたいだな」と自虐しているし、ベルリは「人が見えたら撃てないでしょ」と言っている。

しかしキラだけが「不殺主人公」として(主にネガティブな方向で)話題になるのは何故だろうか?

 

理由をいくつか考えてみた

 

 

明確に戦い方が変わったから

まあ、一番の理由は間違いなくこれだ。ストライクに乗っていた頃のキラは普通に敵を殺す。一般兵はもちろん、ミゲルやニコル、結果的に生きていたが(は?)バルトフェルドも殺すつもりで攻撃している。その時の「殺したくなんかないのに!」という慟哭は何人もの視聴者の心を打っただろう。

では、どのタイミングで不殺になったかというとフリーダム受領後だろう。

Blu-ray特典での福田監督曰く「相手の戦意を削ぐ戦い方」をするようになった。この「相手の戦意を削ぐ」という言葉をとりあえず覚えておいてほしい。

 

中立的な立場から中途半端に戦争に介入するから

キラの一番賛否両論な点はここだろう。正直不殺なんかどうでもよくなるレベルの問題行動だ。

「SEED」では連合とザフトの戦いを、「DESTINY」ではオーブとザフトの戦いを止めるために三隻同盟という中立的立場からフリーダムを駆り戦争に介入する。「DESTINY」第28話でのキラのこの行動に対しアスランは「お前は戦場を混乱させているだけだ」と叱責する。

しかしキラは「君の言うこともわかるけど」とアスラン正論を受け止めた上でこう返した。

カガリは今泣いているんだ!なのにこの戦闘もこの犠牲も仕方がないことだって、全てオーブとカガリのせいだって、そう言って君は討つのか! 今カガリが守ろうとしているものを! f:id:serimetagross:20231025203042j:image

戦局全体を見据えオーブから離れて正義を貫こうとするアスランと、目の前で失われる命への無念や責任を放棄したアスランに対する今この瞬間の怒りで戦うキラのスタンスの違いがよくわかる。なので「考えもなしに介入してんじゃねえ!」という視聴者やアスランの指摘はごもっともではあるが、私はそんなキラが好きだ。

キラのスタンスを秀逸に皮肉ったのが「AGE」のキオとアッシュなのだが、それはまた次の機会に。

 

 

そもそも本当に不殺なのか?

これに関しては断言は出来ない。「不殺の時もあれば、そうじゃない時もある」以上のことは言えない。

先程の「相手の戦意を削ぐ戦い方」という言葉を思い出して欲しい。言葉のままの行動をキラはしている。武装やメインカメラを狙い相手の機体を機能停止させるのが主な戦法だ。

それで戦意を喪失した相手は逃がし、戦意を失わずに突っ込んでくる相手は殺す気で攻撃する。

フリーダム受領後のキラが殺したネームドは

カラミティガンダム(オルガ)

戦艦多数

プロヴィデンスガンダム(クルーゼ)

デストロイガンダム(ステラ)

そして殺害には至らなかったが

インパルスガンダム(シン)

である。

これらに共通しているのは

・相手の機体性能がフリーダムと互角かそれ以上である

・戦意を絶対に失わない相手である

ということ。

操縦手腕や機体性能で圧倒できる相手は武装やカメラを破壊し戦意を削ぎ、そうではない相手は殺すつもりで戦う。これがキラの戦い方だ。

 

 

まとめ

圧倒的な機体性能と操縦スキルで傲慢とも言える戦い方をするキラに不快感を覚える視聴者は多いかもしれない。そんな人はキラのこの言葉をどうか思い出して欲しい。

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気持ちだけで、いったい何が守れるっていうんだ!

余裕がなくなった時に相手を殺す判断をするのは当たり前である。キラにだって自分の行動が欺瞞であるとわかっている。ガンダムファイトではなく本当の戦争なのだから、大勢の人が死ぬとわかれば舐めた戦い方はできない。思いだけでも、力だけでもダメなのである。

キラは目の前の命を守るために今できる全力を尽くす青臭くも男気溢れる主人公だ。

しかし今度の劇場版ではキラを演じた保志総一朗が「ショックを受けた」「僕はキラという人物をまだ理解しきれていなかった」と言うほど衝撃的なキラの内面が描かれるらしい。「DESTINY」後半から面白みのない戦闘マシーンになり下がってしまったキラが押し殺し続けていた感情もとい「闇」がどう爆発するか。劇場版が本当に楽しみである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:もちろん例外はいる。三日月は葛藤などした事もない完全な戦闘マシーンだしスレッタに至っては実戦自体が12話と最終話だけで論ずるに値しない。

*2:フリットはウン10年単位で自己暗示をかけ続けたった一人で苦しんでいた

お前ら「タイプチェンジ」って何か知ってる?

今、ウルトラマンブレーザーが放送している。デザインはダサいし話もつまらんし、アクションもしょぼい…まあ例年通りなのだが、タイプチェンジを廃止した事で大きな話題を呼んだ。

肯定的な意見も否定的な意見もイキリ中立(これ一番きもい)もたくさんあったが、そんな人達にひとつ問いたい。

 

お前ら、タイプチェンジって何か知ってる?

 

形態変化を全て一緒くたにして「タイプチェンジ」って呼んでない?

例えばティガ・スカイタイプとデッカー・ダイナミックタイプはどっちが「タイプチェンジ」だろうか?どちらもタイプチェンジだろ!って思う人に俺が形態変化を大きく三つに分類して教えたる。そのうちの一つがタイプチェンジだ。

 

タイプチェンジ

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該当する代表的なウルトラ戦士はティガ、ダイナやその贋作であるトリガーとデッカーなど。

光線技を得意とするバランス形態の他にスピード特化やパワー特化の形態を持つ。力で優れた怪獣と戦う時はパワータイプ、空中戦ではスカイタイプ、光線技ではマルチタイプと状況に応じて使い分けている。戦う怪獣や星人の個性も引き立つため私はこのタイプチェンジが大好きだ。

 

パワーアップ(公式名称不明)f:id:serimetagross:20230920230722j:image

これはかなり該当者が多い。短時間だけ基本形態の完全上位互換となる姿にパワーアップする。

私がタイプチェンジと分けて考えたいのがこれである。タイプチェンジが一芸特化形態ならパワーアップは基本形態のバランス型の順当な上位互換形態だ。仮面ライダーで例えるならクウガの四大フォームとアルティメットフォームくらい違う、と言えばわかってくれるだろうか。

ネクサスやメビウスのようにパワーアップだけをする戦士もいれば、トリガーやオーブなどタイプチェンジと併用する戦士もいる。後者はタイプチェンジが下位互換になる傾向が強いので大嫌いだ。

 

スーパーウルトラマン

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二人以上のウルトラマンが合体した姿。スーパータロウ、メビウスフェニックスブレイブやウルトラマンレイガなどが該当する。単純に一人の身体に複数人分の密度なのでめちゃくちゃ強い。例えばスーパータロウは単純計算でタロウの六倍強いのだ。

レジェンドやサーガも私は合体によって生まれたスーパーウルトラマンだと思っているのだが、召喚だとか新生だとか諸説あるらしい。あほくさ。どう見ても合体だろ。光になった子供たちと一体化したグリッターティガもスーパーウルトラマンに該当するかもしれない。

 

ヴァージョン・アップf:id:serimetagross:20230920230952j:image

ついでにもうひとつ。これは「基本形態が最新版にアップデートされる」という非常に特殊な例。該当するのはウルトラマンガイアとウルトラマンアグルのみ。しかし考え方によってはウルトラマンオーブがオリジンザファーストからオリジンになったのもヴァージョンアップと言えるかもしれない。

 

 

最後に

ウルトラマンの形態変化は大きく分けてもこれぐらい違う。「タイプチェンジ廃止」と一口に言っても形態変化全てを廃止したのか、それとも文字通りタイプチェンジのみを廃止したのかわからない。定義や分類がわかっていないなら簡単に言わないことである。

何度も繰り返すがティガとトリガーでは全ッ然違う。前者はタイプチェンジを、後者はタイプチェンジとパワーアップを併用するウルトラマンだ。一緒にするなよ本当に。

 

追記(2023/11/26)f:id:serimetagross:20231126172718j:image

パワーアップしました。どうやら本当に「タイプチェンジだけを廃止」したみたいです。公式がタイプチェンジとは何かを理解してて嬉しかったけど、そもそもタイプチェンジ廃止の話自体オタクが騒いでただけだから実は公式からのアナウンスはない。結局よくわからん。あ、初登場回はアホほどつまんなかったです。ウーン

 

 

 

 

 

機動戦士ガンダム水星の魔女 総括(2023/08/01追記)

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とりあえず、まずこれを見て欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

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劇場版 機動戦士ガンダムSEED公開決定!🎊

 

劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』第1弾PV - YouTube


まさか本当に制作が進んでるとは思ってなかった。サンキュー福田 ファッキュー両澤

 

本当はオチに持ってこようと思ったけど生スパをオマージュして最初に持ってくることにした。

 

 

 

ではガンダム水星の魔女(以下水星)の話に戻ろう。

 

 

 

先に結論から言います。本作は 


制作陣の「やりたい事リスト」を雑に消化するだけのアニメ

です。

 


学園ドラマも、ポリコレ要素も、企業間の対立も、戦争シェアリングも、差別問題も、起業ごっこも、決闘ごっこも、百合ごっこも、もっと言うと過去のガンダムシリーズのオマージュも全部制作陣がTwitterでバズるための「やりたい事リストのひとつ」でしかない。一つ一つが軽いのだ。

 

なので、この作品には思想や視聴者に伝えたいメッセージは無い。商業的には「ガンダム50周年に向けて客層を拡張する」がコンセプト*1なのだと思うが、作劇においては何もない。

基本的に大河内脚本の構成は「びっくり箱」であり引きのインパクトだけはあるが、それだけである。ギアスR2は第一期の貯金や谷口監督の存在があったから綺麗に完結できたものの、ギルティクラウンやヴァルヴレイヴはびっくり箱そのもの。 

こんな全てが浅い駄作を叩いても何も得られないのだが、2クールを耐え抜いた証くらいは残しておきたいので雑にまとめます。

 

まずこの図を見てほしい。

物語終盤で公式が本編外でいきなり明かしてきた「戦争シェアリング」の秘密がこれである。

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は?地球ってパーメットが採掘できないから貧乏なんだよな?何を「支払い」してるんだ?地球の財力が無限じゃないと成立しないじゃん。それともこの世界のモビルスーツってサブスク感覚で使えたりするのか?

地球では絶えず戦争が起こっているようだが、第15話でほんの少し描写されただけである。

だが話を先に進めるために設定のガバには目を瞑って欲しい。とにかく「宇宙移民者に地球人は搾取されている」という情報だけ覚えておけはいい。

宇宙議会連合*2というそれっぽい組織もあるが、舞台装置程度かそれ以下の扱いであり、あの宙域の一応の統一政府なのか、それともフロント間の政治問題を調停するだけの独立組織なのか、もしくは複数の企業国家やフロントが加盟してる国連みたいな組織なのか。その全てが不明なまま作中全ての事件がとある理由によってクッソ雑に解決した。どうやって解決したのかは後述する。

ちなみに一応主人公とされているスレッタ・マーキュリーはこの辺の問題と何一つ関係ない。悪名高いシン・アスカの方がよっぽど主人公していた。

 

問題点は数えたら150個くらいあるんだが、志が低い作品の支離滅裂な設定にケチをつけてもしょうがないので設定面以外での本作最大の問題点を三つだけ挙げようと思う。

 

今更だけど本編観てる前提だからめちゃくちゃ説明は省きます。

 

 

 

ロボットがカッコ悪い

例えば「鉄血のオルフェンズ」や「W」のストーリーはお世辞にも面白いとは言えなかった。しかし玩具販促番組としては間違いなく一流であった。ガンプラはとても安いのでかっこいいモビルスーツが派手なアクションを繰り広げるだけで購買欲が湧くだろう。

しかし水星はどうだ?正直モビルスーツデザインは好みの部類に入る。エアリアルは奇抜ながらシンプルにまとまったデザインでとてもかっこいいと思うし、ミカエリスなんてまさに令和のギャンだろう。ファーストガンダムが好きな身からしたらサブフライトシステムの復活は嬉しかったし。

じゃあ何がクソなのか?理由はたった一つ。

ガンダムが戦わないからだ。

もちろん学校内でのテロ鎮圧や生徒同士のケンカ(企業同士の代理戦争でもある)くらいには使われたが、地球で起こっている戦争・紛争には一度も介入しない。エアリアルやダリルバルデは政治的な駆け引きに使われていたのでまだマシだが、基本的にガキ同士の私闘にしか使われない。何がおもろいねん。鳴り物入りで登場したシュバルゼッテは金持ちのオモチャ程度の扱い。スレッタが最後に乗るキャリバーンに関しては撃墜数ゼロでただビームを避けているだけのつまらなさ!

でも主役機エアリアルの系列機体だけはよく売れたらしいので本編観ずに買うようなイナゴモデラーには感謝した方がいい。ラスボスになった主役機ってシリーズ初*3だしそういう意味でも泊はつくよね。

とにかく本作は玩具販促番組として最悪の出来である。

当たり前だ本作のガンダムは従来のシリーズが持っている「反骨精神の象徴」なんてカッコイイ属性はひとつも持ち合わせていない。あの鉄血にすらあったのに。

戦わないスーパーロボット、超カッコ悪い。

 

 

 

 

 

 

主人公が独裁者

ガンダムシリーズでは主人公が体制側に立っている場合が多い。もちろん水星も例外ではない。解決するとリアルではなくなるので差別や格差に関しては結構ぶん投げることも多い。

じゃあ問題ねえじゃん!って思うだろう。しかし水星の場合はそれが大きな問題点になる。なぜかというと実質的な主人公のミオリネは搾取している張本人デリングの子供だからである。マスクの言葉を借りるなら「将来独裁者になる血筋の者」だ。地球寮を乗っ取る姿はまさに独裁者そのものだった。しかも終盤でミオリネは主人公補正で都合よく交渉を進めベネリットグループの総裁になってしまう。

なのでほかのガンダム作品のようなぶん投げは決して許されないのだが、流石に主役陣営が悪者である自覚があったのか最終回でベネリットグループを解散し強引に解決することでお茶を濁した。

 

 

 

 

 

シャディクに罪を丸投げ

答え合わせである。どうやって全ての事件を解決したか?それはシャディクに全ての罪を丸投げしたから。確かにフォルドの夜明け関連はシャディクが仕組んだことだが、彼は戦争シェアリングに異を唱えた作中唯一の良心なので悪とは言い難い。

最終回ではミオリネとの「取引」により彼の悲願であったアーシアン復権は一時的に果たされた。

その取引の内容は要約すると

・ミオリネはシャディクの望み通りベネリットグループを解体しその資産を地球に売却。

・シャディクはそのために全ての罪を背負う。

である。

一見シャディク完全勝利に見えるかもしれないが、なんとシャディクは何一つ自分が悪くないクワイエットゼロ関連まで背負う事になってしまった。しかも結局その資産も宇宙に吸い上げられているらしい。あれ?完全敗北?

「さよなら」と別れを告げていたから恐らくシャディクは死刑になるだろう。しかし全ての元凶のデリングは元気に生きており、地球で大虐殺を行ったプロスペラも車椅子生活とはいえ家族揃って仲良く幸せに暮らしている。こんなに胸糞悪い話ある?何も解決しなかったとはいえ胸糞度で言えば鉄血の方がまだマシなんじゃないか。

まあシャディクからしたら元カノ?幼なじみ?のミオリネにかっこいい所が見せたくて全ての罪を背負っただけの可能性もあるので一概に可哀想とは言えないかもしれない。シャディクガールズたちも救いたかっただろうしね。

「シャディクかわいそう」ではなく「罪を背負うシャディクかっこいい」に誘導しようとする小賢しい脚本には反吐が出る。やたら過去作の雑なオマージュ*4が見られる本作だが、このシャディクの末路はゼロレクイエムオマージュのつもりなのだろうか?*5

 

 

🌈追記🌈2023/08/01
【悲報】スレミオ、結婚してない

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これはガンダムエース2023年9月号(左が紙、右が電子)のインタビュー記事の一部である。

ポリコレ(=アメリカ)媚びのための百合要素だが中国でも商品展開するためあちらこちらに忖度した結果こんな中途半端な結果になってしまった。

公式ツイ…Xでも謝罪文を出している。

機動戦士ガンダム 水星の魔女 on Twitter: "月刊ガンダムエース2023年9月号掲載のインタビュー記事についてのお詫び 詳細は以下をご確認ください。 https://t.co/E7sBLgnWjJ https://t.co/kEmfOLdZ6E" / Twitter

だがこんな謝罪になんの意味があるのか?

誰とセックスし誰と結婚しようがスレッタは頭空っぽのラジコンであり、ミオリネは傍若無人な独裁者であり、主従関係の域を出ないし水星がガンダムをコケにした駄作である事は変わらない。

クィアベンディングだのLGBTを差別にしてるだのそもそも百合じゃないよねだの外野のバカ共はうるさいが、本文の方で書き連ねた問題点の前ではそんな事はどうでもいい事なのだ。

エラスレだろうがグエスレだろうがグエミオだろうが水星の魔女はクソアニメです。カップリングは関係ありません。

 

 

 

 

結局何がやりたかったの?

繰り返すが本作は「50周年に向けてガンダムの客層を広げる」という目的で制作された。なので作品を通してのテーマなんてものはない。

だがそれは悲しすぎるのでせめて私が無理くりにでもこじつけてあげようと思う。

ずばり依存からの脱却である。スレッタがミオリネやプロスペラの依存から脱却できたのは相手から捨てられたゆえの結果論なので脱却もクソもないのだが、逆にこれしか作品通してのテーマ性は見つからなかった。

話が少し逸れるが、ガンダムシリーズの原点にして最高傑作・ファーストガンダムを私はガンダムに依存していた少年がガンダムを捨てて帰る場所を見つける話」だと思っている。

 

そういう意味では水星の魔女は

「客層を拡張しつつ原点回帰を目指した作品」

なのかもしれない。

 

そんなわけあるかバカ

 

 

 

まとめ

毒親問題

→全員縛られたまま親を肯定しました。デリングもサリウスもプロスペラも無罪!w

 

・差別や貧困

→強引に解決したようで実は何も解決しませんでした!これからもアーシアンスペーシアンのために殺されてください!


・人殺し

→トマトベチャアはただのバズ狙い、虐殺や人体実験も無罪!w


ガンダムの呪い

→誰も疑問を持たないので素質と気合いで乗ったら要介護になりました!wでもガンダムは全部消滅したので解決!

 

スレミオ同性婚

→パートナーはおろか対等な人間関係にすらなれませんでした!w

 

 

この作品は全てに意味がないクソアニメです。

 

おわり

 

 

*1:ソースはガンダムエースだかニュータイプだがその辺の雑誌。興味あったら君らが探してくれ

*2:ベネリットグループが議会連合の権威を脅かすほどに力を持ちすぎたという設定はユニコーン連邦政府に口出しできるくらい権力を持ったアナハイムに近いかもしれない。

*3:鉄血はバルバトスがラスボスだと考える事も出来るが、その場合ジュリエッタという名前がついてるだけのモブ同然のキャラクターが主人公って事になってしまうので絶対に違う。種死のラスボス機体?レジェンドじゃね知らんけど

*4:ユニコーンのオマージュが非常に多いが、オマージュの元ネタから既にクソおもんないよね

*5:ただし大河内不参加の劇場版でルルーシュは永遠の命を生きる事で罪を償い続けている

トラウマ級に怖い怪人・怪獣〜東映編〜

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今回はトラウマ級に恐ろしい東映特撮の怪人たちを紹介します。大人でも怖いと感じる方が多いと思うので覚悟のない人はブラウザバック推奨。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではいきます

 

 

 

 

 

 

 

 

 パピヨンオージャー/リタ・カニスカ


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「もっふんのこと転売した奴半年しかぶち込めなかった」
死罪でいいのに!

自称「邪悪の王」ギラを中心に各国の暴君たちが結託した恐怖の連合軍「王様戦隊キングオージャー」の一人。ゴッカンの女王かつ国際裁判所の最高裁判長であり事実上チキュー全体の司法権を握っているとんでもない怪人である。キングオージャーが支配する星「チキュー」は中世のような世界観なのにリタの口から「暴行罪」「侮辱罪」など現代的な法律名がスラスラと出てくるため恐らく司法権だけでなく立法権もこの女が独占していると思われる。チキューの事実上の支配者と言ってもいい。

もっふんというキャラクターを介して喋る様子は「UFOロボ グレンダイザー」のベガ星連合軍のガンダル司令官を思わせる。

まだ16話までしか放送されていないが彼女の悪行は数え切れない。というか前提からおかしいのでどこから突っ込んでいいのか分からない。突っ込みたい人はぜひ本編を観て欲しい。

 

 

カマキリオージャー/ヒメノ・ラン


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イシャバーナには醜い者の居場所は無い!

同じく「キングオージャー」の一人で美と医療の国「イシャバーナ」に君臨する独裁者。リタは非常に独善的で法を振り回して他国を威嚇する恐ろしい怪人だったが、ヒメノに関しては自国民すら迫害するマジモンの暴君である。

20代のセバスに「執事っぽくしろ」と特殊メイクを強要したり過度なルッキズムが目立つが美の国ならばまだ納得できなくはない。

だが、自分が歩く道にあった民家を「障害物」と見なし住民を追い出してダイナマイトで爆破する様子は後に新しい家を用意して埋め合わせたとはいえ邪智暴虐が過ぎる。しかしヤンマガストが言うには「力とカリスマ性があれば何をやってもいい」のでこの世界ではこの行動は悪ではないらしい。

障害者年金のようなものも独断で支給していたので税金の使い道もヒメノの一存で決められるようだ。普通の作品なら革命を起こされて倒されるはずだが「キングオージャー」は凡百のヒーロー物とは違い志が高い作品なのでそうはならない。いや、なれよ。

 

 

仮面ライダーゼロワン/飛電或人f:id:serimetagross:20230619144911j:image

ヒューマギアは人類の夢だ!

飛電インテリジェンスの大首領であり「龍騎」の仮面ライダーシザースや「ウィザード」の仮面ライダーワイズマンなど平成以降の作品に多く見られるダークライダーの一人。

彼の配下のロボット怪人「ヒューマギア」は人間のお手伝いロボットの域を超え生活インフラとなっており、物語開始時点で既に世界征服が完了しているという歴代で見ても最強クラスの実績を持つ。権力者や有名芸能人などのカースト上位の人間をメンバーとして取り込んでいるがまだ完全な世界征服は完了していなかった暗黒結社ゴルゴムよりも恐ろしいと言える。

最終局面では人間とヒューマギアの抗争が起こるがその結末は濁されている。しかしその勝敗は…まあ考えるまでもないだろう。

 

仮面ライダーギーツ/浮世英寿f:id:serimetagross:20230619144605j:image

俺が運営するデザイアグランプリだ。創世の神としてな。

同じくダークライダー。前述のヒメノやリタが所属するキングオージャーのリーダー・ギラは「俺が世界を支配する」と言っていたが正直口だけである。同じ高橋脚本の「エグゼイド」の檀黎斗も神を自称するマッドサイエンティストにすぎない。しかし英寿は違う。神になって世界を支配し、新たなデザイアグランプリを運営しているのだ。高橋先生の集大成のような主人公で俺は感動している。最終話である第45話が非常に楽しみである。

 

 

仮面ライダーディエンド/海東大樹f:id:serimetagross:20230619151855j:image

今度は君が傷つきたまえ!

悪名高い春映画の第一作目「スーパーヒーロー大戦」のラスボスにしてライダーと戦隊の頂点に立つ男。元々はただの泥棒だったのだが、そんな彼がライダーと戦隊の頂点に立つに至った衝撃的な理由はぜひ映画本編で確認して欲しい。

 

 

 

 

 

 

プレミア発表会を観て思った最新作「ウルトラマンブレーザー」への期待と不安

今年の夏も例年通りニュージェネレーションシリーズが放送する。その名も「ウルトラマンブレーザーf:id:serimetagross:20230615164712j:image

【メインキャスト集結!!】新番組『ウルトラマンブレーザー』プレミア発表会 - YouTube

代わり映えしないスタッフ*1、ショボいセットとアングル、ダサい変身アイテム、後藤デザインの醜悪なデザインのウルトラマン、それに不釣合いなそこそこかっこいい主題歌。あまりにも例年通りすぎてもはや安心感すら覚える。

正直期待できる要素などひとつもないが、ニュージェネレーションガイアを回避できただけでも御の字だろう。

 

しかしプレミア発表会を見ると「ブレーザー」の力の入りようは「Z」以上だ。個人的にZは苦手な作品ではあるが間違いなくニュージェネの中では「一番マシ」な出来の作品であり後続のニュージェネが超えるべき壁としては申し分ないだろう。

まず一つ目に思った事は隊員の数が多い事だ。5人の防衛チームなんてむしろ少ない方なのだが、ニュージェネ基準では多いと思う。「Z」のストレイジはあまりにも少数精鋭(笑)な上に現場に出て戦えるメンバーがハルキとヨウコの二人しかいない。「トリガー」「デッカー」のガッツセレクトも現場で行動するのは基本的に主役級の三人だけだ。野外で動ける役者の数をそれなりに揃えただけでもかなり力を入れていると思える。

防衛メカもナースデッセイやキングジョーSCのような過去作の人気怪獣を模したものではなくアースガロン*2というオリジナルメカを出してきた。

田口がコクピット描写に力を入れたと強調していたので「デッカー」のひどいコクピット描写になにか思うところがあったのだろう。

そして新規怪獣の数も多い。

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だいたい8体くらいだろうか?再登場にはデマーガ、ガラモン、ガヴァドンがいるが新規造形はガヴァドンだろうか?二匹目が存在しえない怪獣なのでどうして再登場できるのかは不明だが雑にギエロン星獣を出すシリーズなので考えたら負けなのだろう。

円谷が以前より儲かっているというのは本当なのかもしれない。

 

で、ここまでの発表を見て思ったことなのだが…

 

 

 

 

 

 

トリガーとデッカーは“捨て企画”だったって………コト!?

 

 

 

 

「作品」としてのティガとダイナの力をお借りし二年間貯金し、三年目の本命たるブレーザーに全てを賭ける気なのだろう。

田口がコクピット描写をやたら強調したのも頷ける。トリガーとデッカーのコクピット描写を思い出して欲しい。

トリガー時の遠隔操作は確かに最悪だった。 しかしデッカー時のように身体を固定してないからどこにもGを逃がせないコクピットなのはやばいし、まともに新造出来ないのを「乗り心地は最悪です!」というギャグで誤魔化す不誠実さがあった。

だがギャグで誤魔化すくらいには制作陣もフラストレーションが溜まっていたのだろう。

なので「二年間我慢してくれ!その代わり三年目は新しい事をやれるんだ…!」という気持ちで頑張っていたのだろう。

トリガー・デッカーを見ていればわかるが造り手はそこまで平成三部作が好きではないのが伝わってくる。再登場怪獣もネオフロンティア怪獣は最低限で基本的に昭和の人気怪獣である。*3

トリガーの元ネタである「ウルトラマンティガ」は初代ウルトラマン以上にバラエティに富んだ作風でありおなじみの古代怪獣や宇宙怪獣はもちろん、過去作にはない珍しい目的を持った宇宙人やおとぎ話の怪物、日本の妖怪、鬼など様々なキャラクターが登場する。縮小再生産を覚悟でシリーズの存続を最優先するニュージェネとはすこぶる相性が悪く「何をもってティガオマージュなのか」という問題が出てくる。

そこで本編からは巨大戦艦、メインの敵として劇場版ティガの闇の巨人という要素を引き継ぎ他はそのまま「いつものニュージェネ」として制作された。

デッカーではティガファンから評価の低い劇場版ティガをベースにした事を反省したのかダイナTV本編から要素を拾ってきただけではなくウルトラマンダイナ本人ともガッツリ絡めたが、結局「いつものニュージェネ」だった。

個人的にはスフィアがダイナ版と同一個体と確定しダイナもデッカーの物語に深く絡んでしまったことから別物と割り切ることができるトリガーの方がまだ耐えられる作品だった。

 

とにかく地獄のような二年間だったのだが全てはブレーザーのために制作陣も我慢していたんだなと思うと少しくらいはこの二作を許してあげたいな…と

 

 

 

 

 

思いません。

 

特にデッカーは絶対に許さんからな。

われらのダイナを「スフィアを皆殺しに出来ずバズド星を守れなかったくせに先輩風を吹かせる間抜け」に改悪し、そのケツをデッカーと新生ガッツセレクトに拭かせる最悪のストーリーをどうして許すことが出来るのか。

今年のウルトラマンがニュージェネレーションガイアにならなくて本当に良かったと心から思う。

 

*1:

メイン監督:田口清隆/監督:辻本貴則・中川和博・越知靖・武居正能・宮崎龍太

メイン脚本:小柳啓伍/脚本:小柳啓伍継田淳・山崎太基・植竹須美男・足木淳一郎・中野貴雄根元歳三

シリーズ構成:小柳啓伍・田口清隆

*2:アーストロンモチーフかもしれないが見た目が全く似てないから多分違うと思う

*3:丸山怪獣より成田怪獣の方がかっこよくて売れるからこれは仕方ないが

ロボットアニメにおける「リアル」とは何か。

スーパーロボット大戦というゲームでは「リアル系」と「スーパー系」という区分がある。

しかし「機動戦艦ナデシコ」と「新世紀エヴァンゲリオン」がそのくだらない分類をぶっ壊してくれた。心から感謝しています。

そんな時代になぜ今更リアルさについて論じるのか。それは先日友人と「リアルの定義は人によって違う」という話題になったからだ。

 

 

 

なので私が独断と偏見で「リアルだな」と思ったロボットアニメをいくつか挙げて行こうと思う。

 

 

 

太陽の牙ダグラムf:id:serimetagross:20230606234307j:image

高橋監督自ら「リアルロボット」と称した超エポックメイキングである本作。では具体的に何がリアルだったのか?政治劇や社会構造などリアルなストーリーではある。だがここだけなら後述する長浜ロマンロボシリーズやガンダムシリーズでも十分リアルだ。本作が人気を博したのはそれ以上にロボットの戦闘描写がリアルだからだ。「アルドノア・ゼロ」や「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」など高橋アニメの後追いのようなロボットアニメは数あれどダグラムに並びうるものは一作もないだろう。

なぜならそれらの贋作は実弾で戦う泥臭い戦闘シーンこそ至高だと考えているからだ。アルドノアは露骨にスーパーロボット(ワンオフ機)を、鉄血はビーム兵器を主役機の踏み台にするが、ここでダグラムの主武装を思い出して欲しい。
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ほぼ一撃必殺の威力を誇るリニアガンである。リニアガンとは何かというと「電磁誘導によって熱の塊を弾丸として発射する武器」である。わからない?

じゃあ「ガンダムビームライフルに更に科学的な理屈をつけたもの」だと言えばわかるだろう。

傾斜した装甲には実弾は効きにくいから装甲の上から焼いちゃいましょうねという算段だ。

リアルじゃない*1ビームライフルに細かい理屈をつけたらほら途端リアルになりましたね!

マジンガーZのジェットスクランダーの枠として「ターボザック」がある。これはを取り付けると活動時間が伸びたりリニアガンを連射できたりリニアガンの5倍強いリニアキャノンを撃てるようになる「外部電源」である。近いものだとガンダムSEEDのストライカーパックだ。あとはコンバットアーマーは歩いて移動するのは向かないからトラックやヘリで分解して運搬するとか、とにかく全ての装備に理屈をつけているのがこのダグラムだ。

あんまりダグラムのリニアガンが強いもんだからついに装甲を全部取り外して運動性に特化したキチガイロボットまで出してくる。
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まあ、ダグラムの装甲が頑丈すぎてソルティックの量産機では傷一つ付けられないんですけど…

 

 

 

長浜ロマンロボシリーズ

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長浜ロマンロボシリーズとは長浜忠夫が監督する「超電磁ロボ コン・バトラーV」「超電磁マシーン ボルテスV」「闘将ダイモス」「未来ロボ ダルタニアス」の4作である。特にボルテスは革命ものとして非常に完成度が高いが、今回はあえてダルタニアスを選んで紹介しようと思う。なぜならダルタニアスは戦争そのものよりも戦争によって出た被害描写が非常に丁寧かつ独特だからだ。

ザール帝国の攻撃を受けて壊滅した日本の市場ではサツマイモが7千円、りんごが8千円、バナナが2万円と食料品がとんでもなく値上がりをしていて子供も盗みに走る。ターゲットである小学生ぐらいの視聴者でも「戦争ってマジでクソだよな!」と感じられる描写ができるのは太平洋戦争をリアルタイムで体験した人間だけであり、非常に説得力がある。主食はサツマイモで米はご馳走というのも実際に経験していないと描けない描写だ。

 

 

マジンガーZ

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「えっ!?どこが!?」と思った人もいるだろう。だがそれも仕方ない事だ。何故ならリアルロボットどころかロボットアニメ全体の雛形が本作なのだから。人がロボットを操縦する、という大前提の超初歩的な部分から始まる現在の「常識」が全て詰め込まれているからである。しかしこの作品は今見てもリアルな部分がある。それはロボットアニメとしての「お約束」が定着する前の作品だからである。

意外に思われるかもしれないがマジンガーZに必殺技はない*2。ブレストファイヤーやロケットパンチガンダムビームサーベルビームライフルと同じように「強い武器」なのである。いわゆる「必殺技」を定着させたのはライディーンゴッドバードやゲッタードラゴンのシャインスパークだった。ロボットのエネルギー源が何かを明示したのも、定期的にメンテが必要なのも、リミッター解除もマジンガーZが初だ。ロボットアニメの「当たり前」の先駆者がマジンガーZなのだ。エルガイムのムーバブルフレームだってそうで、現代の「当たり前」は全て昔の天才が考えたものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に

現実にダグラムは存在しない。ビームライフルロケットパンチもだ。だがこういった「スーパーな兵器」が「現実に存在したらどうやって使うんだろう?」という思考の元に作られた描写に「リアル」が宿るのだ。*3

ガンダムを分割して運搬する事で「コアスプレンダー」名義にすれば条約の穴を突けるはず!

ロケットパンチを飛ばして落下する人間を救助できるはずだ!

主役ロボット・バルキリーと同じ大きさの巨人が敵ならば人型である理由になるのでは?

民間が強いロボットを持ったら国が独占しようとするに決まってる!

など、こういった「現実にスーパーロボットが存在するとしたら君はどうする?」という思考こそがロボットアニメにおける「リアル」である。思考停止したミリオタが語る浅〜い「リアル」とは絶対に違う。

別に結果的に出来上がったものがツッコミどころ満載な描写だっていい。考えた事自体に意味があるのだから*4。むしろ積極的に突っ込んで次に活かせばいい。そうしてロボットアニメは沢山生まれてきたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:一応ビームライフルにもかなり理屈はつけられているがミノフスキー粒子という存在しない物質がある前提なので

*2:強いて言うならば大車輪ロケットパンチ

*3:特撮だとシン・シリーズが顕著でいわゆる「お約束」に全力で理屈をつける。これが俺が好きな「リアル」だ

*4:真実に向かおうとする意思