ガンダムシリーズにおいての「悪」とは何か。

ガンダムは従来のロボットアニメとは違い勧善懲悪ではない。恐竜帝国やメガノイドのようないわゆる「悪の軍団」は出てこない。

しかしそんな世界でも許されざる悪は存在する。

今回はそんな悪を宇宙世紀を中心に私の主観で紹介していく。

 

 

自分の行動に責任を持たない者f:id:serimetagross:20231026164819j:image

該当者:パプテマス・シロッコクンパ・ルシータなど

カミーユ曰く「お前だ!いつもいつも、脇から見ているだけで、人を弄んで!」な人物。歴史の生き証人や傍観者を気取り安全圏から戦争に干渉する卑怯な奴らだ。特にクンパは人類を「絶滅した方がいい動物」と蔑むほどの過激な人物でありながらあくまでも直接誰かを殺したりはせず遠回りな方法で自分の手が汚れないように立ち回る小悪党。主人公の手で引導を渡すのが難しいタイプの敵であるため戦闘に巻き込まれる形で死なせたのは英断だと思う。

 

 

民間人を大量虐殺する者f:id:serimetagross:20231026164748j:image

該当者:ギレン・ザビシャア・アズナブル(CCA)、フェザール・イゼルカントなど

いくら目的が崇高だろうと虐殺行為は悪である。地球連邦に宇宙移民を完遂させるためアクシズを落とそうとするシャアにアムロは「人が人に罰を与えるなどと!」と言っていた。ギレンは地球保全+優生思想のおまけつきである。*1

そして優生思想の中でもイゼルカントは一番ヤバい。「戦争のない楽園」を実現するために火星と地球の全面戦争で生き残った「優良種」だけを地球に住まわせるとんでもない世直しを行おうとしていた。勧善懲悪アニメの悪者ですらドン引きする本物の魔王だ。

 

地球連邦政府

宇宙世紀ガンダムシリーズ最大の悪。地球連邦政府は宇宙移民という名目でスペースコロニーに棄民し、しかもコロニーに住むスペースノイドを何十年も搾取し続けている。シャアやジャミトフ、ハマーンらのやり方や組織は皆違ったが「地球連邦政府に宇宙移民を完遂させる」という目的自体は同じであった。ガンダムが勧善懲悪ではない一番の理由は「主人公が体制側の組織に所属している」事である。

しかし同時に歴代のガンダムパイロット達はあくまでも連邦「政府」ではなく連邦「軍」に所属しているため決して体制の犬にはならない強い反骨精神を持つ。ガンダムが勧善懲悪ではないはずなのにロボットアニメとしてのヒロイズムを失わない理由はこれである。

 

 

平和ボケしている者

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該当者:ギム・ギンガナム、ジット団、東方不敗など

この場合の平和ボケとは何かと言うと「戦争を賛美すること」である。そういう人間は「∀」と「Gのレコンギスタ」において徹底的に悪として描かれた。中でもジット団はレコンギスタという大義があるのをいい事に「正義の戦争」を気取りモビルスーツや戦艦をおもちゃのように扱う。最終回でラライヤがジット団と合流したアメリアの艦隊に向けた言葉がある。

あの軍艦に乗っている大人って、大きなおもちゃを貰ってはしゃいでるんです!
あそこにいる大人たちが!貴方達は、そういうものを使う意味がわかっていません!

かなり本質を突いている。

東方不敗の平和ボケもなかなかだ。確かにガンダムファイトを否定する彼の独白は戦争の悲哀を知っているから説得力があったが、根本的に彼は大きな勘違いをしている。

東方不敗「なにがガンダムファイトだ!? なにが理想的な戦争よ!?我が身を痛めぬ勝利が何をもたらす?所詮はただのゲームぞ!

ドモン「だが、無闇に人が死ぬよりは遥かに良い!」
東方腐敗「だからお前はアホなのだぁぁぁ!

確かにガンダムファイトはお遊びかもしれないが人の命が守れるならそれに越したことはない。しかしドモンの言葉を「アホ」と切り捨ててしまう東方不敗は戦争を賛美する平和ボケした老害になりさがってしまったのだ。

 

 

まとめ

ガンダムは勧善懲悪ではないが英雄譚ではある。なので善悪の境目こそ曖昧なものの義理人情や守るべき社会的道徳(=正義)は確実に存在し、同じように憎むべき悪は存在するのだ。

 

 

 

*1:まあギレンに関してはコロニーを落とす際にサイド2の人間も虐殺しているので地球だけでなくコロニー含めた人類全体の敵だと思うが…