前回のポケモン世界の人間についての考察記事が好評だったので、今回はポケットモンスター金銀(HGSS)の有名なセリフを解像度を上げて考察していこうと思う。
強い ポケモン 弱い ポケモン そんなの 人の勝手。本当に 強い トレーナーなら 好きな ポケモンで 勝てるように 頑張るべき
ポケモンをある程度プレイしている人なら知っているであろうこの台詞は四天王カリンに勝利すると聞くことができる。
カリンは「金・銀」で初登場した四天王で、悪タイプをメインに様々なタイプのポケモンを使用してくる強敵だ。
一見すると一理ある発言だが、古くからマイオナプレイヤーが言い訳に使ったりガチプレイヤーを批判する時に使われたりすることも多く、この発言を嫌う人も一定数いる。
私も2018年くらいまではレーティングバトルをそこそこやり込んでいた元「ガチ」の身であり、同時に金銀は歴代でも特に好きなシナリオの作品なのでカリンのセリフやその解釈には思うところがある。
なので
の4つに分けて私の意見を述べたい。
1.「強いポケモン」の具体的な定義
まず強いポケモンって何ぞや?って話。
ランクマッチやレーティングバトルで考えるならばメガガルーラ(第6-7世代)やキノガッサ(第5世代)、ウーラオスやエースバーン(第8世代)の鬼神のごとき強さは記憶に新しいだろう。
オフが中心となって現代でも開拓が続く第二世代の対戦環境(神ゲー)もガラガラやメガニウムなど今では考えられないポケモンが最強クラスだった。*1
当のカリンの手持ちポケモンはブラッキー、ラフレシア、ゲンガー、ヤミカラス、ヘルガーの5体である。ブラッキーとヘルガーは当然としても、わざわざ悪タイプ以外の強いポケモンであるゲンガーを採用している事から「数値やタイプ、技が非常に優秀なポケモン」を強いポケモンとしているのだろう*2。
ここで一旦ゲームシステムとしての強弱から離れ、世界観単位で考えてみよう。
当時のジョウト地方ではまだ悪タイプが発見されたばかりであり、メタ的な意味ぬきで開拓が進んでおらずあの世界に使い手がカリンくらいしかいない。だからカリンだけが悪タイプの強み・弱みを理解しているとも考えられる。
ここでまたもう一つ「強いポケモン」の定義が見えてきた。そう、自分のプレイスタイルにマッチした性能である。
有象無象にとっては悪タイプなどぽっと出の雑魚でしかないが、四天王にまで上り詰めた実力者カリンにとっての最強タイプは悪タイプでありその中で強いポケモンがヘルガーとブラッキーなのである。
2.「好きなポケモン」の定義
ぶっちゃけるが私は強いポケモンが好きだ。好きなポケモンは強いポケモンである。
もっと言うとバンギラスやメガメタグロスのような「強くてかっこいいポケモン」だ。
逆に嫌いなポケモンはドダイトスやアブソル、レントラーのような「かっこいい見た目なのに弱いポケモン」だ。
カリンは強いポケモンが好きという考え方を特に想定していないように見える。彼女の考え方の偏りに関しては後述する。
3.「人の勝手」が孕む大きな矛盾
この言葉に関しては私も一理あると思う。ポケモンの強弱はマジで人による。私は第六世代で大きな強化を貰ったとはいえマリルリはあまり強いと思えなかったし、受けループは追加効果の試行回数を増やし自分から運負けをしに行くドM向けクソザコ欠陥構築だと思っている。
本当に強いトレーナーなら好きなポケモンで勝てるよう頑張るべき
─────ん?
本当に強いトレーナーなら好きなポケモンで頑張るべき
─────んん?
頑張るべき
─────ほう。
べき。
はい価値観の押し付け、いただきました〜!!!w
この台詞の「ひっかかる部分」「気持ち悪い部分」は恐らくここだろう。
この女は人の勝手だとか言いながら「本当に○○ならば△△であるべきだろ!」と価値観を押し付けてくるのか。とんだバカマンコである。
さっき言ったように彼女は強いポケモンが好きという考えを想定せずに「強いトレーナー」「好きなポケモン」の何たるかを語っていた。
これが雑語りでなければ何だと言うのか。
4.スルーされがちな本質
さっきは揚げ足を取ってカリンちゃんをいじめてしまったが、決して気の強そうな女性のプライドを折って悦に浸って射精したいわけではない。*3
最初に述べたようにカリンたその台詞をガチプレイヤーを叩く時の棒として使う自称エンジョイ勢が一定数いる。
しかし、カリン様が本当に伝えたかった本質は彼らには全く伝わっていない。
その本質は私がさっき「価値観の押し付け」として叩いていた部分にある。
本当に強いトレーナーなら好きなポケモンで勝てるように頑張るべき
勝てるように頑張るべき
‘‘ 勝 て る よ う に ’’頑張るべき。
カリンの言葉の意味もわからずに使う人は「勝てるように頑張った」だろうか?
彼女は四天王の四人目、ワタルの言葉を借りるなら「四天王の大将」である。
言うなればカントー/ジョウト地方において二番目に強いポケモントレーナーなのだ。
彼女は誰よりも強さに執着し、勝つために頑張っている。
最後に。
確かに例の台詞は言葉足らずではある。しかし、四天王という「実績」があるからこそ説得力があり名言として愛されているのだろう。
だが、それでも非常に誤解されやすい言葉であり弱いプレイヤーが勝てない言い訳に使うケースが後を絶たない。それを公式も認知しているのか以降の作品ではカリンの言葉を補足してくれるキャラクターが何人かいる。
それらを紹介してこの記事を終わろうと思う。
ではまた。
カロス地方・四天王ズミ
ポケモン勝負に おいて
弱い ポケモンなど いません
弱い トレーナーが いるのみです
ポケモンの よさを 見極め
こだわり 強さを 引き出しなさい
前半部分はカリンの誤解されやすい部分を誇張していてぶっちゃけ嫌いなのだが、本質的には同じで「ちゃんとてめえの頭でポケモンの強み弱みを分析しろよ」と激励してくれるのは嬉しい。
最強のポケモンなどいないしベストの組み合わせもない…
それゆえ常に勝ち続けるのは難しい。
だが強さを求める心 最強を知りたい気持ち
それをわたしは尊いと思う。そしてそれを持っているおまえを尊敬する。
ぶっちぎりで好き。ポケモンにおいて一番の名言だとすら言える。誤解されやすいカリンのセリフの「勝てるように頑張るべき」という本質部分だけを抜き取って誇張した名言。
バトルリゾート・とある老人
バトルリゾートにいるトレーナーのほとんどは恐らく主人公と同じようにチャンピオンを打倒し招待されている可能性が高い。本当に強いトレーナーであるカリンのセリフをそれよりも強い可能性の高い本当に強いトレーナーが言うからこそ説得力の出る「年の功」な名言である。